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ボトックス治療について
脳卒中をはじめとする、中枢神経障害の後遺症の一つに「痙縮(けいしゅく)」があります。これは筋肉を引き延ばすときの抵抗が大きくなる現象で、関節が一定の姿勢で動かなくなってしまうような程度が強いものから、運動速度の低下やぎこちなさといった比較的軽い程度のものまで、さまざまに認められます。
リハビリテーションの世界では、この痙縮に関する研究と対策は、重要なテーマです。代表的な治療法として、装具療法、内服治療、痙縮のある筋や腱、あるいは末梢神経に対する手術、神経破壊剤(一時的な破壊ですが)の注射などがありますが、どれも効果に限界があり、副作用も懸念されるため、依然として痙縮は私たちにとっての難敵なのです。
ところが平成22年11月から、グラクソ・スミスクライン社の「ボトックス注」の、痙縮に対する保険適用が認められ、幅広く使うことができるようになりました。私が米国で勉強していた平成6年の時点で、シカゴでは脳性まひのお子様の痙縮治療にボトックスが使われていました。日本での使用はその16年後、現場で手にすることができました。使用方法は、目標とする筋肉の数か所に筋肉内注射するだけで、15~30分で済みます。私も数人に使用しましたが、作用には幅がありました。この薬は、副作用が少ないとされており、試す価値があると思います。また、大切なこととして注射後、リハビリテーションを組み合わせて行うと良いとされています。注射と訓練が同時に提供できる当院では、しっかりと痙縮治療を行うことに心がけています。